カンボジア不動産投資の基礎ガイド
カンボジアは、東南アジアの中でも長期的な経済成長を続けてきた国の一つです。若い人口構成や、都市化の進展。さらに、外国人でも一定の条件でコンドミニアムを所有できる制度もあります。こうした特徴から、不動産投資先として注目されています。
一方、現在の不動産市場は調整局面にあります。制度、税制、建設品質、デベロッパーリスク。新興国ならではの注意点も少なくありません。したがって、「成長国だから不動産価格も上がる」と単純に考えるのは危険です。むしろ、物件ごとの条件を慎重に見極めることが重要になります。
そこで本記事では、2026年時点の情報をもとに解説します。カンボジア不動産投資の特徴、メリット、そして注意点を整理していきます。

カンボジア不動産投資を考える前に知っておきたい基礎情報
■ カンボジアとはどんな国?
カンボジア王国は、インドシナ半島に位置する立憲君主制の国です。タイ、ラオス、ベトナムと国境を接しています。国土面積は181,035平方キロメートル。つまり、日本のおよそ半分の広さです。
人口については、国連人口基金の推計があります。2025年時点で約1,790万人です。首都はプノンペンで、公用語はクメール語です。実際、2024年の統計ではクメール語の使用が96.4%を占めます。宗教も仏教が96.5%と大半です。
なお、法定通貨はリエルです。ただし、都市部を中心に米ドルも広く使われています。これがカンボジア経済の大きな特徴の一つです。
■ 長期的に高い経済成長を続けてきた国
カンボジアは、長期的に見れば高い成長を続けてきました。支えてきたのは、縫製業、建設業、観光業、農業です。近年では、製造業の多角化も進んでいます。加えて、海外からの直接投資も増えています。
ただし、常に成長が続いてきたわけではありません。実際、2020年は実質GDP成長率がマイナスでした。新型コロナウイルスの影響によるものです。その後、経済活動は回復しています。
では、足元はどうでしょうか。世界銀行は2026年6月、カンボジア経済報告の最新版を公表しました。この中で、2026年の実質GDP成長率を3.9%と予測しています。2027年には4.9%への回復も見込んでいます。もっとも、課題も指摘されています。不動産市場の低迷や、外部環境の変化です。
したがって、過去の高成長だけを見るのは危険です。現在の市場環境もあわせて判断する必要があります。
■ 若い世代が多い人口構成
カンボジアの特徴の一つが、人口構成です。生産年齢人口の割合が比較的高い国とされています。
これは、労働力を考えるうえで重要な要素です。加えて、国内消費や住宅需要にも影響します。
一方で、注意も必要です。若い人口構成だけで、不動産需要の増加は保証されません。価格上昇も同じです。むしろ、所得水準、住宅供給量、都市開発、雇用環境をあわせて見るべきです。
カンボジア不動産投資の具体的な特徴
■ 外国人でも一定の条件でコンドミニアムを購入できる
カンボジアでは、外国人でも不動産を購入できます。ただし、条件があります。対象は、区分所有権が設定されたコンドミニアムなどです。
外国人が所有できる主な不動産:
- 区分所有権が設定されたコンドミニアムなどの専有部分
外国人が原則として直接所有できない不動産:
- 土地そのもの
- 土地の所有権を伴う一般的な一戸建て住宅
根拠ははっきりしています。憲法第44条と、2001年土地法第8条です。土地を所有できるのは、クメール国籍の市民とカンボジア法人に限られます。
なお、所有できる階層や、1棟あたりの所有比率には法令上の制限があります。ただし、要件は物件によって異なります。したがって、対象物件が条件を満たすかは、購入前に専門家へ確認してください。
では、法人を作れば土地を持てるのでしょうか。実は、そう単純ではありません。会社法第101条は、カンボジア法人の要件を定めています。カンボジア国籍の個人または法人が保有者となります。議決権付き株式の51%以上を持つことが条件です。したがって、外国人側は少数株主になります。土地や戸建ての取得を検討する場合は、専門家への確認が欠かせません。現地の弁護士などに相談しましょう。
■ 米ドルを基準に取引される物件が多い
カンボジアでは、都市部を中心に米ドルが広く使われています。不動産も例外ではありません。販売価格や賃料が米ドルで表示されるケースが多くあります。
つまり、購入価格や賃料収入を米ドル基準で考えやすくなります。これはカンボジア不動産の特徴の一つです。
ただし、誤解もあります。日本円を持つ日本人が投資する場合、米ドル/円の変動を受けます。したがって、米ドル建てでも為替リスクがなくなるわけではありません。
しかも、影響は購入時だけではありません。賃料収入や売却代金を、将来日本円へ戻す可能性もあります。そこまで含めて投資計画を考える必要があります。
■ 物件によっては比較的高い表面利回りが提示される
プノンペンのコンドミニアムでは、高い表面利回りをうたう販売資料も見られます。日本国内の不動産と比べれば魅力的に映ります。
ただし、注意が必要です。提示されている利回りと、実際に得られる収益率は異なります。
実際の利回りは、購入価格だけでは決まりません。成約賃料、入居率、管理費、修繕費。さらに、家具・家電の費用、仲介手数料、税金も影響します。つまり、これらによって大きく変わります。
加えて、世界銀行は不動産セクターの低迷を指摘しています。したがって、供給量やエリアによっては空室や賃料下落のリスクもあります。「高利回り」という数字だけで判断してはいけません。むしろ、周辺の実際の成約賃料や入居状況を確認すべきです。
■ 海外企業の進出と外国人居住者の賃貸需要
カンボジアには、日本を含む各国の企業が進出しています。分野も製造業だけではありません。サービス業、小売業、金融、物流など幅広く活動しています。
特に首都プノンペンには、大使館や国際機関も集まっています。そのため、外国人駐在員などを対象とした賃貸市場があります。
ただし、外国人向けなら自動的に埋まるわけではありません。通勤利便性、周辺施設、セキュリティ、建物管理。加えて、家具・設備や賃料設定も入居率を左右します。
カンボジア不動産投資で注目されるエリア
■ プノンペン:経済・行政の中心地
プノンペンはカンボジアの首都です。政治・行政・経済の中心地でもあります。さらに、海外企業や商業施設、教育機関も集積しています。
ただし、「プノンペン」という単位で考えるのは大雑把すぎます。むしろ、エリアごとの特徴や供給状況を確認することが重要です。
代表的なエリア:
- BKK1(ボンケンコン1):中心部の一つ。大使館、レストラン、カフェ、商業施設などが集まる。外国人居住者にも認知度が高い
- トゥールコーク:住宅地として発展してきたエリア。コンドミニアムや商業施設の開発も進む
- コー・ピッチ(ダイヤモンドアイランド):計画的な都市開発が進むエリア。コンドミニアムや商業施設が立地する
- リバーサイド周辺:トンレサップ川やメコン川に近い。ホテル、飲食店、観光関連施設が集まる
もっとも、同じエリアでも条件は一様ではありません。立地、築年数、管理状態、デベロッパー。これらによって物件価値は大きく変わります。したがって、エリア名だけで投資判断をしないことが重要です。
■ シェムリアップ:アンコール遺跡群を擁する観光都市
シェムリアップは、カンボジアを代表する観光都市です。世界遺産アンコール遺跡群への玄関口として知られます。そのため、観光需要と結びついた不動産市場が形成されています。ホテル、ゲストハウス、サービスアパートメントなどです。
一方で、観光都市の不動産には特有の性格があります。国際観光客数、航空便、世界経済の影響を受けやすい点です。実際、新型コロナウイルスでは観光需要が大きく変動しました。したがって、観光客の増加を前提とした投資には注意が必要です。
■ シアヌークビル:港湾・観光開発が進む沿岸都市
シアヌークビルは、カンボジアを代表する国際港を持つ沿岸都市です。かつては開発が急速に進みました。中国をはじめとする海外資本の流入によるものです。ホテル、商業施設、コンドミニアムなどが次々と建設されました。
しかし、副作用もありました。供給過剰や、建設途中で止まったプロジェクトです。したがって、投資を検討する場合は確認が欠かせません。完成済みか建設中か、周辺の稼働状況、デベロッパーの実績。この3点は慎重に見るべきです。
カンボジア不動産投資で注意すべきポイント
■ 物件そのものの品質を確認する
まず、海外不動産では前提が違います。建築基準、施工管理、メンテナンスの考え方。いずれも日本とは異なる場合があります。
カンボジアでも、物件によって建設品質には差があります。しかも、完成後の管理状況で差はさらに広がります。築年数が経過した後の状態に、大きな違いが生じます。
したがって、購入前には現地で実物を確認しましょう。見るべきは建物だけではありません。共用部、周辺道路、騒音、交通状況。加えて、近隣の開発計画も確認したいところです。
■ デベロッパーの完成実績を確認する
次に、デベロッパーの信用力です。プレビルド物件や建設途中の物件では、特に重要になります。
というのも、計画どおりに進まない可能性があるためです。不動産市況の変化や、資金調達環境の悪化。これらによって建設が遅延することもあります。
そこで、次の4点を確認しましょう。過去に完成させたプロジェクト、引き渡し実績、既存物件の管理状態。可能であれば、事業者の財務状況も見たいところです。
■ 法律・税制を確認する
カンボジアの不動産関連法や税制は、日本とは異なります。しかも、税制や運用が変更されることもあります。したがって、購入時点の最新制度を確認する必要があります。
主な税金・諸費用の例:
- 購入・移転時:不動産の所有権移転には印紙税が課されます。税率は原則4%です。英語ではStamp Taxと呼ばれます。なお、課税標準は契約価格だけで決まるとは限りません
- 保有時:年0.1%の不動産税がかかります。課税標準は、不動産評価委員会が定める評価額から1億リエルを控除した金額です
- 賃貸時:賃料の支払いには源泉徴収税が生じる場合があります。居住者への支払いには10%が適用されます。一方、非居住者へのカンボジア源泉所得には14%が適用されることがあります
- 売却時:キャピタルゲイン税の税率は20%です。ただし、施行時期の変更が繰り返されてきました
■ 税額は一律ではない
なお、印紙税には優遇措置が設けられることもあります。一定の条件を満たすボレイやコンドミニアムの購入が対象です。ただし、対象となる価格帯や適用期限は制度改正によって変わります。
しかも、すべての住宅購入に自動的に適用されるわけではありません。対象となる物件、デベロッパー、購入回数、移転時期などについて条件があります。したがって、実際の購入時には最新の制度を確認してください。
もっとも、実際の税額は一律ではありません。所有者が個人か法人か。居住者か非居住者か。さらに、物件の所有形態や取引方法によっても変わります。
したがって、税率だけを見て判断するのは危険です。購入・保有・賃貸・売却まで含めて考えましょう。そのうえで、現地の税理士や弁護士に確認することをおすすめします。
■ 賃貸管理会社の選定
日本に住みながら所有する場合、現地の管理体制が鍵になります。
というのも、業務は入居者募集だけではないからです。家賃の回収、契約更新、退去対応。さらに、設備トラブル、修繕、定期点検も発生します。
そこで、管理会社を選ぶ際は次の点を確認しましょう。サービス内容、管理実績、手数料、報告体制。加えて、日本語対応の有無も重要です。
■ 出口戦略まで考えて購入する
海外不動産では、2つのことが別問題です。「購入できること」と「希望する価格で売却できること」です。
実際、物件や価格帯によって中古の買い手層が限られることもあります。したがって、売却までに時間を要する可能性があります。
そこで、購入前に3点を確認しておきましょう。将来的にどのような買主が想定されるのか。周辺に同種の物件がどの程度供給されているのか。そして、完成後の管理状態を維持できるのかです。
現在のカンボジア不動産市場は「物件選び」がより重要
カンボジアは長期的に経済成長を続けてきました。しかし、それだけを理由に全ての不動産価格が上がるわけではありません。実際、世界銀行は不動産セクターの低迷を指摘しています。
こうした環境で問われるのは、国単位の判断ではありません。「カンボジアの不動産を買うかどうか」ではないのです。むしろ、個別の判断が重要になります。どのエリアで、どのデベロッパーの、どの物件を、いくらで買うか。ここが分かれ目です。
そこで、複数の視点から確認しましょう。周辺相場と比べて販売価格は適正か。実際の賃貸需要はあるか。供給過剰になっていないか。そして、完成後の管理体制は整っているかです。
まとめ
カンボジア不動産には、日本とは異なる特徴があります。若い人口構成、長期的な経済成長、都市化。加えて、外国人でも一定の条件でコンドミニアムを所有できます。米ドルを基準に取引される物件が多いことも特徴です。
一方で、現在の市場は調整局面にあります。したがって、海外不動産特有のリスクも考慮すべきです。建設品質、デベロッパーの信用力、供給量、空室。さらに、為替変動、法律・税制、売却時の流動性も見る必要があります。
■ 一つの要素だけで判断しない
特に、一つの要素だけで判断するのは避けましょう。「経済成長率が高いから価格が上がる」。「米ドルで取引されるから為替リスクがない」。「高い表面利回りが出ているから収益性も高い」。いずれも危うい考え方です。
また、税制は動いています。キャピタルゲイン税は税率20%ですが、施行時期の変更が繰り返されてきました。したがって、購入時の条件だけを見てはいけません。保有・賃貸・売却まで含めた税負担と出口戦略を確認しておきましょう。
結局のところ、鍵は情報と比較です。現地の最新情報を確認する。複数の物件を比べる。そのうえで、必要に応じて現地の不動産・法律・税務の専門家に相談する。この手順を踏めば、判断の精度は上がります。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。特定の不動産の購入や投資を推奨するものではありません。法令・税制・市場環境は変更される可能性があります。実際の投資判断にあたっては、最新情報をご確認ください。必要に応じて、現地の不動産・法律・税務の専門家へご相談ください。
(参考:JETRO「基礎的経済指標」、JETRO「外資に関する規制」、JETRO「カンボジア 税制」、World Bank「Cambodia Economic Update for June 2026」、PwC Worldwide Tax Summaries)
