観光客数45%減でも収益が増えた理由と回復策
カンボジアの観光業に異変が起きています。2026年第1四半期の外国人観光客数は前年同期比で約45%急減しました。カンボジア・タイ間の国境紛争や中東情勢の悪化による燃料費高騰が主な要因です。一方で、2025年の観光収益は38.7億ドルと前年比6.6%増を記録しました。客数が減っても収益が増えるという「逆説」が生じています。本記事では、この数字の背景と、カンボジア観光当局が打ち出している3つの回復策を整理します。

観光客数45%減・収益6.6%増:何が起きているのか
2026年第1四半期の外国人観光客数の急減は、複数の要因が重なった結果です。タイとの国境紛争が続く中、陸路での入国が大幅に落ち込みました。加えて、中東情勢に起因する燃料費の上昇が航空便の運航コストを押し上げています。これにより、就航便数と旅行者数の両方に影響を及ぼしました。
しかし注目すべきは、2025年の観光収益が過去水準を上回った点です。客数の減少にもかかわらず収益が増えた背景には、滞在日数の増加や1人あたりの消費額の上昇があると分析されています。つまり、カンボジアが長らく目指してきた「量から質へ」の観光転換が、数字として現れ始めた可能性があります。
- 2026年第1四半期:外国人観光客数が前年同期比約45%減少
- 2025年:観光収益38.7億ドル(前年比6.6%増)
- 客数減・収益増という「逆説」は、消費単価の上昇を示す
観光当局が打ち出す3つの回復策
■ 1. 中国人向けビザなし措置(2026年6月15日〜10月15日)
2026年6月15日から10月15日まで、中国人旅行者はビザなしでカンボジアに入国できます。事前申請や手数料は不要で、Eアライバルカードの記入のみで対応できます。中国はカンボジアにとって最大の旅行者送客国のひとつです。そのため、観光当局はこの措置で、夏〜秋にかけての客数回復を見込んでいます。
■ 2. グリーンシーズンキャンペーン(5月〜10月)
5月から10月は雨季(グリーンシーズン)にあたります。従来は観光オフシーズンとされてきた時期です。しかし、カンボジア観光省は「Visit Cambodia in the Green Season」キャンペーンを展開し、雨季の魅力を積極的に発信しています。雨季は混雑が少なく料金が安い時期でもあります。これは、長期滞在者やリピーターをターゲットにした誘客施策といえます。
■ 3. 第20回フランコフォニーサミット(2026年11月14〜16日)
最大の目玉は、2026年11月にプノンペンで開催される「第20回フランコフォニーサミット」です。これはフランス・カナダ・スイス・ベルギーなどフランス語圏の国々が集う国際会議で、世界3億4,300万人のフランス語話者コミュニティに向けてカンボジアを発信する機会となります。
加えて、サミットに合わせて開催される「ヴィラージュ・フランコフォン(Village Francophone)」では、各国の観光資源・食文化・工芸品が展示されます。また、デジタル協力と科学技術革新をテーマにしたフォーラム「フランコテック(FrancoTech)」も予定されています。
- 国際会議の開催は、外交・ビジネス・文化交流の3分野で対外的な注目度を高める
- フランス語圏からの旅行者・投資家へのPR機会として最大限に活用される見込み
- カンボジアが「国際会議開催国」としてのブランドを高める節目のイベント
「観光市場の多角化」が中長期の鍵
カンボジア観光省は第2四半期の優先事項として、市場の多角化を明示しています。特定の国・地域への依存を減らし、欧州・中東・北米など幅広い市場からの旅行者を取り込む戦略です。したがって、フランコフォニーサミットはその一環として位置づけられています。
長期的には、観光から移住・ロングステイへの展開も視野に入っています。実際、カンボジアに長期滞在する外国人は年々増加しています。さらに、観光をきっかけに「住む」選択をする人が増えることは、地域経済・不動産市場にも好影響をもたらすでしょう。
まとめ
- 2026年第1四半期の外国人観光客数は約45%減。タイとの国境紛争・燃料費高騰が主因
- 2025年の観光収益は38.7億ドル(前年比6.6%増)。客数が減っても単価が上昇する「質の転換」が進む
- 中国人向けビザなし措置(6月15日〜10月15日)・グリーンシーズンキャンペーン・フランコフォニーサミットの3施策で回復を図る
- 市場の多角化と、観光から移住・ロングステイへの展開が中長期の成長ドライバーとして期待される
カンボジアの観光業は、数字の上では厳しい局面にあります。しかし観光省が示す戦略は、短期的な客数回復だけを目指すものではありません。質の高い旅行者・長期滞在者・国際的な会議参加者を呼び込む「複層的な誘客モデル」への転換が着実に進んでいます。2026年後半の動向から目を離さないでおきましょう。
(参考:Khmer Times、Khmer Times(観光収益)、Cambodianess、Khmer Times(フランコフォニー))
